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院内通信

インフルエンザについて
(以下の文章は平成13年1月の発行当時の状況に基づいたもので、現在とは薬の使用法などの点が異なっています。ご了承下さい。)

 皆様、明けましておめでとうございます。年始から寒さが増してきましたが、体調はいかがでしょうか。
 さて近藤医院では今年から、このような院内通信紙を発行することになりました。日々の診療ではなるべく病気の説明を心がけていますが、患者さんが混んだときなどには、十分理解していただく時間がとれません。また最近では特にテレビでおびただしい医療情報がもたらされています。それはそれで結構なのですが、なかには医者の目から見て?のつくようなものもあり、患者さんが振り回されている面もあります。そこでこのような紙面で、定期的に(3ヶ月に一回の予定)色々な病気の簡単な説明をおぎなおうと考えました。内容は「簡潔でわかりやすく」を基本とし、よく話題になる病気の重要なポイントを、なるべく数字をあげて説明します。さらにありふれた医学書のような書き方ではなく、「私(近藤)はこう考えている。」といった医者の本音も盛り込みたいと思います。また医療情報だけでなく診療の案内や「最近読んだ本」「患者さんの声」なども随時挿入し、気楽な紙面にするつもりです。
あまり最初から気合いを入れすぎると長続きしませんので、前置きはこれぐらいにします。皆さんのご意見・ご感想を反映したいと思いますので、遠慮なく私か職員におっしゃって下さい。

「インフルエンザは本当に恐いのか?」
この創刊号ではインフルエンザを取り上げました。今年は暖冬のためか流行するのが例年より遅いようです。しかし一昨年はワクチンが足りないということが問題になったためか、年末からワクチン接種希望の問い合わせが多数ありました。しかしワクチンの納入に限りがあったため、一部の患者さんにしか接種できず、多くの方々にご迷惑をおかけしてしまいました。
さてインフルエンザはどの程度危険な病気なのかみてみましょう。

(注・・・以下の内容は発行時平成13年1月での見解で、現在は新薬が発売され、治療の所の記述が古くなっていますが、全体の基本的な考えは変わっていません。(平成14年4月30日))


インフルエンザの症状
 かかったことのある人ならわかりますが、突然の39℃近い発熱、頭痛、体のふしぶしの痛み、筋肉痛、などの体全体の症状やのどの痛み、鼻水などが現れます。よく問題になるのが「風邪とどこが違うのか?」という点です。違いはインフルエンザは、・インフルエンザウイルスに感染することで起こる。(風邪はその他のウイルスが原因)・空気感染する。(風邪は接触感染が多い)・風邪より全身の症状が強い。・流行がはっきりしている、などです。しかし実際には風邪でも重ければインフルエンザに似た症状が出ることもあり、風邪なのかインフルエンザなのか白黒つけられない場合もよくあります。この時には「インフルエンザの疑いがある」として、慎重に経過をみることになります。

インフルエンザウイルスは
 大きさは一万分の1ミリという非常に小さい病原体ですが、患者さんから出た咳、痰が霧のようになって空気中に飛び散り、そのウイルスの入った小さな粒を吸い込むと、鼻・のど・気管の粘膜に侵入してそこで増殖します。そして全身的な症状を起こします。このウイルスは表面に「とげ」を持っていて、その形によってA、B、Cの3つの型があり、そのなかでもさらに分類があります。細かいことはどうでもいいのですが、現在はA香港型、Aソ連型、B型の3種類が毎年流行しています。
このウイルスのずる賢いところは、同じA香港型といっても毎年少しずつ「とげ」の形を変えることです(小変異といいます)。つまり一度人間が感染してウイルスに対する抗体を作っても、翌年にはウイルスの形が少し変化しているために抗体が十分はたらかないのです。このためインフルエンザワクチンは毎年接種することになります。

過去の大流行
 インフルエンザの恐さが決定的に印象づけられたのは1918年(大正7年)の「スペインかぜ」でしょう。なにしろ全世界で2千万から4千万人が亡くなったというのですから。日本では届けのあった数だけでも25万7千人の死亡と記録されています。当時は「流行性感冒(流感)」と呼ばれ、今より医療レベルが低かったとはいえこれは驚くべき数です。その後はスペインかぜほど爆発的ではありませんが、1957年アジアかぜ、1968年香港かぜ、1977年ロシアかぜという世界的流行がありました。
なぜこんな大流行が時々おこるのかというと、新型のウイルスが突然現れるからです。これは先程述べた小変異に対して大変異と呼ばれ、鳥のウイルスとヒトのウイルスが混合してできる、全く新しい型のインフルエンザウイルスの登場です。このウイルスに対する免疫は世界中の誰一人として持っていませんので、あっという間に世界中にひろがってしまうのです。

どのくらいの被害があるか
 日本で1シーズンに50から120万人がインフルエンザにかかると報告されています。ただこれは届け出があった数だけですので実際にはもっと多いはずです。インフルエンザによる死亡数は500から1,400人で、計算するとかかった人の約1,000人に1人が亡くなられている、ということになります。原因は殆どが気管支炎や肺炎で90%以上は65歳以上の方です。よく老人ホームなどでのインフルエンザの集団発生、死亡が報道されていますね。つまり高齢で、色々な病気を持っている人(特に肺の病気)や抵抗力の弱い人、寝たきりの人などが危ないのです。逆に中年までの成人で重い病気のない人は、インフルエンザにかかってつらい目にあっても命取りになる危険は少ないともいえます。このような数字はあくまで最近の流行の結果であって、スペインかぜの時のような大変異で新型ウイルスが登場すれば話は別です。この場合には日本全体で3〜4万人の死亡者が予想されています。なにしろどんなウイルスか予想できませんので、ワクチンを前もって作っておくことができないのです。流行しはじめてから大急ぎで作ることになり、出来上がりまでの数カ月間は感染がひろがります。過去の新型ウイルスの登場からもう20年以上経っていますので、いつ新型に置きかわってもおかしくないとされ、対策が検討されています。

治療はどうするのか
 以前はインフルエンザウイルスを直接やっつける薬はありませんでしたが、平成10年からアマンタジン(商品名はシンメトレル)という薬が使えるようになりました。近藤医院でも何人かの患者さんに処方した結果を調べましたが、確かに1、2日早く治るようです。ただこの薬の弱点はB型インフルエンザに効かないことと、耐性ウイルスを作ってしまうことです。つまり一人の患者さんがシンメトレルで治っても、周りのひとにはこの薬が効かないインフルエンザウイルスがうつってしまうことがあるのです。ですから高齢の方や重い持病のある方に優先的に使うべきでしょう。
もう一つの抗ウイルス薬はザナミビル(商品名リレンザ)といい、気管に吸入して使用します。これはシンメトレルと違い、A、B型両方に効き、耐性ウイルスもできにくいとされています。欠点は吸入方法がやや難しいのと、まだ保険がきかない(薬代だけで5日分3,750円)ことです。しかし私自身がもしインフルエンザにかかったら今度はこの薬を試してみようと思っています。
 これらの抗ウイルス剤を使う以外の治療は普通の風邪の時と全く一緒です。つまり鼻水が強ければそれを止める薬、咳がひどければ咳止め、肺炎の疑いがあれば抗生物質を処方することになります。あとは安静と適度な栄養補給が必要なのはいうまでもありません。もっともしんどくて動けないのですが。
病状の経過としては2、3日発熱が続いたあと解熱して、咳や鼻水、全身けんたい感などが続きます。肺炎か脳炎(確率は非常に少ない)にならなければあとは日にち薬で、10日から2週間までには元にもどります。
近藤医院の方針としては、原則として高齢の方や持病のある方にはシンメトレルを処方し、それ以外のふだん元気な方には肺炎に注意しながら通常の風邪の時の薬を使いつつ乗り切っていただく、と考えています。

解熱剤は使ってもよいのか 
 昨年11月、厚生省から「インフルエンザ脳炎、脳症の患者に対してジクロフェナクナトリウム製剤を投与してはならない。」という緊急安全情報が届けられました。ジクロフェナクナトリウム製剤の代表は商品名ボルタレンという薬で、かぜのとき解熱、痛み止めとしてよく使われてます。インフルエンザ脳炎、脳症の患者さんで、この薬を服用していた方に亡くなられたケースが他の薬より多かった、というのが中止理由です。
 かぜでもインフルエンザでも、「むやみに熱を下げてはならない」という方針が定着してきました。つまりウイルスとたたかう為に必要だから熱が出ている、という考えなのです。小児科医のなかには、母親が何と言っても絶対に解熱剤を出さない、という人もいます。しかしインフルエンザで39℃の熱が何日も続くのはかなりつらいものですので、弱い解熱剤であるアセトアミノフェン(商品名カロナール)ならば使用しても良いというのが一般的な考えです。

インフルエンザを予防するには
 予防接種(ワクチン)での予防効果は、ある研究では65歳以上の方々で、約45%の発病を予防し、82%の死亡を減らす効果があったとしています。ワクチンを接種したら絶対インフルエンザにかからない、とうわけではないのですが、発病の確率を約半分にし、死亡率を8割減らすのならばかなりの効果です。何度も書きましたが高齢の方や持病のある方には勧められます。
ワクチンの副反応は注射したところの腫れや痛み、まれに発熱、頭痛、けんたい感などですが2、3日でおさまります。ワクチンによる死亡事故は約2,500万接種に1件というもので、予防接種として安全なものです。
補足すべきとことは任意接種(つまり患者さんの自由意志)なので費用がかかる(近藤医院では1回3,000円)こと、あたりまえですが普通のかぜを予防する効果はありません。
 ワクチン以外の予防法としては、睡眠を十分とり、体力を落とさないようにすることが最も大切です。これはかぜの時と同じです。また空気感染しますので、流行時には人混みのなかに行かないことです。よくいわれる手洗いとうがいですが、いったんウイルスがのどや気管の細胞に入り込んでしまえばうがいをしても洗い流せないので過信はできないでしょう。

 以上、「簡潔にわかりやすく」という割にはくどくどと書いてしまいましたが、おわかり頂けたでしょうか。皆様のご意見、ご感想をお待ちしています。

(平成13年1月)


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